Espion's Note

スパイ的なあれこれを蓄積する私立諜報機関のブログ「エスピオンズ・ノート」

神経剤『Новичо́к(ノビチョク)』

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2018年3月4日にロシアの元諜報員でイギリスに亡命中のセルゲイ・スクリバリ氏とその娘が暗殺されそうになり、記事作成時点でも重体が続いています。イギリスのテリーザ・メイ首相は、暗殺未遂に使われたのが神経剤「Novichok(ノビチョク)」であるとを明らかにし、ロシア当局による暗殺未遂である可能性が極めて高いという声明を発表しました。ソ連が開発し、今なお暗殺ツールとして使われるノビチョクについて、BBCやSky Newsがまとめています。

Russian spy: What are Novichok agents and what do they do? - BBC News
http://www.bbc.com/news/world-europe-43377698

Novichok nerve agent: What exactly is it?
https://news.sky.com/story/salisbury-poison-was-russian-made-novichok-pm-confirms-11287491

◆スクリバリ氏暗殺未遂事件
スクリバリ氏はロシアの元情報将校で、イギリス情報部MI6に機密情報を漏洩した罪で2004年にロシアで有罪となりましたが、2010年にスパイ交換によって釈放され、その後イギリスで暮らしていました。

スクリバリ氏と娘のユリアさんは、2018年3月4日にイギリス・ソールズベリーにあるショッピングセンター外のベンチで倒れているところを、ニック・ベイリー刑事巡査部長によって発見されました。病院に運ばれた二人は重体の状態が続いており、ベイリー刑事巡査部長も重体で入院中です。

 

gigazine.net

 

2018年3月って今年の話ですからね!

ヤバいでしょ!

毒性の低い物質を混ぜ合わせて作れるらしいんですけど、マレーシアで金正男氏が暗殺された時に使われたVXガスオウム真理教が使っていたサリンなどの5-8倍致死性が高いそうです。

 

しかも解毒剤がないと。

神経剤ノビチョクの開発に関与したロシア人科学者ウラジーミル・ウグレフによれば、「もしスクリパリと娘の襲撃に致死量のB-1976、C-1976、またはD-1980が使われたなら、過去に毒殺された被害者と同じ運命をたどる可能性が極めて高い。ノビチョクに解毒剤はない。もし生命維持装置を外せば2人は死ぬ。今も機械に生かされているだけだと思う」と。

 

www.newsweekjapan.jp

 

これは決して、スパイ映画の世界の話だけでもなく、昔の話だけでもなく、今ここに起きているリアルな話です。僕たちがスパイとして認識すべきことは、ノビチョクやVXのような一瞬で人を殺せるような神経剤が2018年のこの世に確実に存在していること、そして限られた人たちがその情報を所持しており、それを扱える状況にあるということ。

ちなみにノビチョクは、ロシア語で新参者とか新人という意味ですが、作られた当時のそれがニューカマーだったからでしょう。開発されてから時間が経っています。

ということは、ノビチョク(新人)が増えてる可能性だってありますよね。当然化学(科学)技術は恐ろしいスピードで進化していますから。

 

結論。僕たちはスパイとして世の中の裏側を見つめる努力を怠らず、新たなノビチョクに警戒せねばならない。お隣さんがノビチョクうっかり開発できちゃったりしないことを祈りつつ。